幻の伽藍を偲ぶ ~明日香編~
[鹿の舟]がある奈良市内に平城京があったことは、
皆様よくご存知のことと思います。
その、平城京への遷都が行なわれる前の飛鳥時代に都が置かれ、
様々なドラマが展開された地でもあり、
仏教が我が国に伝来し、文化も豊かに花ひらいた場所...。
それが、奈良県中部に位置する明日香村です。
今回は、飛鳥時代に思いを馳せ、
近鉄吉野線「飛鳥駅」をスタートに、明日香村を訪ねました。
まさに、現代のルーツともいえるその時代へ赴いたイメージで
古の都を巡ってみましょう。
飛鳥駅から、東へ向かってゆるやかに登って行った先に、
「橘」と呼ばれる地域があります。
こちらは、柑橘の祖である田道間守(たじまもり)が持ち帰った
柑橘の実が蒔かれ、後に芽吹いたことが由来となっているそうです。
この地に古くから伝わるお寺があります。
聖徳太子誕生のいわれがある、橘寺です。
現在の本堂は、江戸時代の再建です。
かつては、金堂・講堂・五重塔・堂舎66舎を持つ大伽藍だったそうですが、
その後兵火などで失われ、
様々な人の想いを得て、こちらの美しい本堂が復興したそうです。
敷地内には、聖徳太子にまつわる寺宝はもちろんのこと、
この土地の名のいわれである、橘もあります。
また、飛鳥時代の作と言われる「二面石」という、
人の善悪を表現したのではないかと考えられる
謎に満ちた石造物もあります。
歴史のロマンを、たっぷり味わえるお寺です。
それでは、こちらから向かいの方向へ行ってみましょう。
広々とした遺構が見えてきます。
かつて、大寺として数えられた、川原寺跡(弘福寺(ぐふくじ))です。
(写真提供:川原寺 弘福寺)
(写真提供:川原寺 弘福寺)
大化の改新で有名な、天智天皇が建立され、
現在は、弘福寺がその法灯を継いでいます。
こちらは、まさにその歴史的出来事の起こった場所でもあり、
実際にその場所を臨むことができます。
発掘調査により、塔や金堂・講堂などを持つ大寺であったことがわかり、
珍しい瑪瑙(めのう)の礎石を実際に見ることもできます。
また、写経の発祥地として、
心を静めながら、自分と向き合うことができます。
可愛らしくデザインされた弘法大師の写経もあり、
様々な年代の皆さまが挑戦できますので、
ぜひ訪れ、その時代を感じてみてください。
(写真提供:川原寺 弘福寺)
今回ご紹介したお寺の他にも、
かつての都を感じられる場所が、多く残っています。
ゆっくりと巡りながら、
飛鳥時代に思いを馳せていただければと思います。
※奈良市内の寺院を取り上げた、前編もぜひご覧ください。