特別講座 「のむ」 ありがとうございました
11月4日(土)・5日(日)の2日間、
「ギャルリももぐさ」主宰の安藤雅信さんを講師にお招きし、
生活学校特別講座「のむ」を開講いたしました。
今回の開催場所は、高畑にある「志賀直哉旧居」。
柔らかい光が差し込む子供の寝室と直哉の居間の2室を会場に開催いたしました。
安藤さんが和洋折衷の空間が美しいと評されるこの建物は、
奥さまと新婚旅行で訪れたという思い出の場所でもあります。
講座1「中国茶との出会い」では、陶作家になるまでの過程から、
ギャルリももぐさのこと、中国茶との出会いについて伺います。
彫刻を学んでいた学生時代から感じていた西洋へのコンプレックスから、
いつしか日本人の持つ「美」を意識するようになり、
茶道を学び、焼き物の世界に足を踏み入れた安藤さん。
五感を研ぎ澄まして茶室で過ごすときの感覚を、ギャルリももぐさにも活かしていると言い、
過去の展示内容を伺う中で、安藤さんが大切にしてきた想いが感じられました。
また、今日に至るまで、いくつもの苦労を乗り越えられた安藤さんは、
受けた仕事を実直にこなしていく中で技術も磨かれていき、
人生に無駄なときは何もなかったと言います。
中国茶に出会うまでの過程の中で、安藤さんの紡ぐ言葉の節々からは、
茶道や日本文化への敬意、そして強い生き様が感じられました。
講義中、「白」への飽くなきこだわりから、安藤さんがコレクションされている
白い食器がスライドに写った際は、一つずつ特徴を説明してくださりました。
生み出された白の時代背景を辿ることで奥深い白の世界を感じ、
[鹿の舟]繭にて開催中の陶展では、器ごとに10種類の白を使い分けているそうです。
お昼の休憩を挟み、講座2「中国茶とは/お茶をのむということ」では、
安藤さんから中国茶の基本的な知識をお伝えいただいた後、
謝小曼(シャオマン)さんによる中国茶の飲みくらべをお楽みいただきました。
飲みくらべでは、安藤さんも参加者側に立つことで、
他の皆さまと同じ目線で中国茶のことを語らい合います。
まずは、器を変えて飲みくらべ。
一番左の明の時代の茶杯と、安藤さんが手掛けられた茶杯が並びます。
茶杯の口の大きさや深さ、釉薬の種類によって変わる、お茶の香りや味わいを
じっくりとお楽しみいただきます。
口の中全体で味わうためにはどんな形の茶杯が良いのか、
謝小曼さんこだわりの茶葉を嗜みながら、感性を研ぎ澄ませます。
当初は、明の茶杯が一番美味しく感じるのでは、との予想も飛び交いましたが、
参加された皆さまそれぞれに味わいの違いを体感し、お気に入りの茶杯を選ばれました。
次は、4種の瓶の飲みくらべ。
瓶の素材によって味わいにどのような変化が生まれるのか、皆さま興味津々です。
合間では、茶壺をはじめ、茶器のお勧めや茶葉の保存方法、
安藤さんが今回のために用意した茶器のこだわりの部分など、様々な話が繰り広げられます。
最後は、6種の茶葉の飲みくらべ。
それぞれの茶葉の特徴を説明してもらい、
茶葉の香りを楽しんでから、一つずつ味わいます。
夕刻には、[鹿の舟]囀に移動し、交流会の時間が始まります。
食事と合わせてワインを用意し、器を変えて飲みくらべます。
お酒が入ることで、会話も弾みます。
翌日、講座3「中国茶会」では、安藤さんと謝小曼さん主催のもと、
参加者は2組に分かれ、前半と後半の2部制でお2人の中国茶会をご体験いただきました。
襖1枚で隔てられた空間の中、同時に開催されるお茶会。
どちらのお茶会も和やかな雰囲気の中、進められます。
お茶を見つめるお2人の表情や美しい所作に、時が経つのを忘れてしまいます。
お茶の味わいはもちろん、お茶請けも、安藤さんが選ぶこだわりの品が揃います。
少し油分の入ったお菓子と中国茶の相性はとても良いそうです。
謝小曼さんが事前に見つけた紅葉した柿の葉がお茶請けに添えられていたりと、
秋を愉しむ仕掛けもみられます。
2日間の講座で使用した安藤さんの作品の数々。
中国茶を愛でておられる安藤さんだからこそ生みだせる茶器が
講座に大きな彩りを添え、味わいにより深みをもたらしました。
また、講座中に「侘・寂」の日本文化を取り上げ、
老子の思想と侘の文化に繋がりを見出される安藤さん。
中国茶を通して、日本人の「美」意識に触れていただけたなら幸いです。
ご参加いただいた皆さま、有難うございました。