第四回講座 「すまう」 ありがとうございました
9月23日・24日の2日間、
建築家の中村好文さんを講師にお迎えして、
生活学校 第四回基幹講座「すまう」を開催しました。
今回の開催場所は、橿原市今井町。
今井町は、今も江戸時代以前の建物が多数存在する、全国的に見ても珍しい町です。
戦国時代に一向宗の寺内町として建設され、自衛力を付けた城塞都市として発展。
江戸時代に入ると、大阪や堺とも交流が盛んになり、木綿類などを中心とした商業で栄え、
高度な自治都市として繁栄しました。
現在もその町並は「伝統的建造物群保存地区」として保たれ、伝統的な町家が6割を占めており、
そのうち9件が重要文化財に指定されています。
午前の会場は、今井まちなみ交流センター「華甍(はないらか)」。
重厚な明治時代の趣ある講堂で、講演「心地良い住まいとは」が始まりました。
中村さんと奈良との出会いは、高校一年生の頃。
国語の教科書の最初のページにあった、「浄瑠璃の春」という堀辰雄のエッセーでした。
そこには、堀辰雄が憧れを抱いていたという、奈良に咲く「馬酔木(あしび)の花」が登場します。
先生が朗読してくれたその文章をとても良く感じ、奈良という場所に憧れを持ったのだそうです。
大学生になり、満を持して出かけた奈良への旅。
一週間ほどの滞在で、特に印象に残ったのが、
百毫寺(奈良市)の集落、稗田(大和郡山市)の環濠集落、そして今井町でした。
お寺に関する奈良の文献は多々あっても、なかなか奈良の集落の面白さについて書かれている本はなかったため、
実際にご自分の目で見て、良いものだと思われたそうです。
また10数年前に、今井町の重要文化財「豊田家住宅」を見に行かれた際には、
その竈の造形に強く惹かれ、感動。
魅力的な曲面を持つその竈は、幼い頃にごはんを炊いていた「竈の記憶」とともに、
中村さんの「奈良の竈」への憧れを強くしていました。
今回の講座「すまう」のテーマは、その竈だけではなく、
古い集落というものを考えながら、今の暮らしにどう残していくか、を考えること。
講演では、午後からの今井町散策の参考になるようにと、
中村さんがこれまでに手掛けて来られた、古い建物の改修から、エネルギーを自給自足する小屋に至るまで、
様々な種類のものを、スライドや映像を見ながら解説・紹介していただきました。
(昼食には、[鹿の舟]竈の特製お弁当をお召し上がりいただきました。)
午後は「豊田家住宅」前にて集合し、
「音村家住宅」、「旧米谷家住宅」、「河合家住宅」、「高木家住宅」の5つの民家を順に見学して回りました。
解説を聞きながら、それぞれに気になったところを写真やメモで記録していきます。
扉の仕掛けや工夫には皆さん興味津々。
普段暮らす住まいとの違いや、歴史を感じる家の造りに驚きながら、
じっと眺めて気が付く小さな意匠の工夫など、探せば探すほどに新たな発見があるものです。
その後一度解散し、それぞれに残りの散策を楽しみ、[鹿の舟]囀へ移動。
夜の部、立食スタイルでの「参加者交流会」がスタートしました。
食事を楽しんでいただきながら、どんどん場の雰囲気は和やかに、
会の終盤、参加者お一人おひとりの挨拶では、皆さんそれぞれの個性と面白さで大きな笑いの渦ができるほど、
愉快で楽しい夜の時間となりました。
最後は中村さんの一本締めで終了!翌日へと続きます。
24日の講座「いま暮らす工夫を考える」は、[鹿の舟]繭で開催しました。
当初の講座のアイデアとしては、今井町の民家のうち2つのプランを題材に、
それを現在にどう使い変えるか?を考える予定にしていました。
しかし、昨日見た民家の規模が大きく、また2階まで内部すべてを見ることは叶わなかったため、
その状態で考えるのは難しいと判断し、新しいテーマを立てていただきました。
そのテーマは「今井町 町家改修 5つの要素」。
お手本として、まず建築家ル・コルビュジェの「近代建築 5つの要素」の内容を、解説をしていただきました。
その後、それぞれに昨日撮影した写真をスライドに映しながら、
気になったポイントを報告し合っていきました。
次に、3つの班に分かれて、昨日見たものを思い返しながら、
自分が実際に暮らすならどんなところが不便に感じるか、逆にどんなところを活かしたいと感じるか・・・、
それぞれに話し合い、言葉に整理してまとめていただきました。
3班それぞれの発表が終わり、講座としては終了。
皆さんからのアイデアを踏まえ、中村さんに改めて「5つの要素」を言葉にまとめていただき、
後日お伝えすることになりました。
2日間通しのプログラムで、濃密な時間をともに過ごした12名の皆さん、
最後にはすっかり打ち解け合い、なにか強い絆で結ばれたように見受けられました。
「何を学んだ?」と聞かれて、具体的な説明をすることは難しいかもしれませんが、
中村さんと過ごした時間が教えてくれるもの、がたくさんあったように感じます。
発見すること、自ら楽しみを見出して楽しむこと・・・中村さんのオープンで温かなお人柄とその姿勢に、
「すまうこと」「くらすこと」を考えるコツ・要素がたくさん詰まっていると感じた生活学校でした。
参加してくださった皆さま、ご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました!