第三回講座 「つなぐ」 ありがとうございました
7月31日・8月1日の2日間、
F/styleの五十嵐恵美さん・星野若菜さんを講師にお迎えして、
生活学校 第三回基幹講座「つなぐ」を開催しました。
1日目は、[鹿の舟]より北へ徒歩2分に位置する「格子の家」、離れの一室を会場に開催しました。
講座1「F/styleのものづくり」では最初に、
F/styleを始められたきっかけから現在に至るまで、年表ごとにスライドショーを組み立てていただき、
どのような流れで今の仕事の形が生まれ続けてきたのかを紐解きながら、お話してくださいました。
sonihouse 鶴林万平さんにも、奈良の作り手として終日ご参加の上で、
お二人とのトークセッションの形式で一緒に内容を深めていただきました。
以前より共通していたのは、「お客さん」としての感覚の強さ。
こんなものがあったらいいのにな、こんな場所があったらいいのになということを、
まず「お客さん」の立場として感じる・考えるタイプであったということ。
そして、「違和感」と向き合う根気強さ。
お二人は、F/styleの仕事を「パイプ掃除係」と話されます。
時代ごとに感じてきた「違和感」に対して、その滞っている部分を見つけては流すように、
仕事の在り方を常に見直し、変化されてきました。
鶴林さんも同じ。自分の「違和感」と向き合いながら、
繊細な音楽を聞ける場を無くしてはいけないという思いで、スピーカーの製作を始められたといいます。
三人に共通する感覚から紡ぎ出される言葉は、どれも嘘のない、正直なもの。
自分の「違和感」や「好き」という気持ちとまっすぐに向き合い続けることが、
時々孤独でもあり、とても努力のいることでありながら、
その気持ちや感覚を、誰よりも自分自身で自信に思い、大事にしてあげることが大切なのだと感じました。
講座1終了後、お昼ごはんには、
シナ縄の集落から届いた新潟米のおむすびを召し上がっていただきました。
中の具は、新潟でおむすび屋を営む「むすびや百」さんに作っていただきました。
午後からの講座2「記憶に残るもの・ことについて」は、
素直な気持ちで、自分自身の心震える原点に出会い直すためのワークショップ。
今回の「つなぐ」というメッセージを伝えるために、お二人が考えてくださった内容です。
参加者お一人お一人に、「長く愛用していて、なくなっては困るもの」、
「ものはなくなってしまったけれど記憶に残っているもの」、「自作のもの(もの以外に料理・場などでも)」、
それぞれのエピソードを事前に描いてきていただき、それぞれの言葉でグループごとに話し合っていただきました。
「違和感」「受け継ぐということ」「食卓の記憶の風景」・・・
みなさんのお話に散らばったキーワードには、
ものとの付き合いにおける大事な要素がたくさん詰まっていました。
頭や言葉で考えるのではなく、それぞれの素直な感覚に立ち戻った時に見えてくるもの。
それぞれに話し合い、ともに引き出し合う時間は、自然と笑顔になるあたたかでやさしい時間でした。
一日の講座を経て、感想とともに話されたF/styleのメッセージがとても印象的でした。
ものづくり人として、仲間に入ってくるものを、緊張感を持って受け入れるということ。
産地の後継者がいない問題についても、「つなぐ」「守る」を簡単に捉えないようにしたい。
付き合い続ける中で、自分の気持ち、自分のタイミングで受け継いだものを大切にすることが
大事なのではないかと話されました。
続く2日目は、[鹿の舟]囀での開催。
F/styleと石村由起子との対談形式で、
石村が出会ってきたものやそれにまつわる思いなども引き出しながら、
さらに、ものとの関わりから今を見つめ直す時間となりました。
印象的だったエピソードから一つ。
若い頃に、思い切って購入した山本教行さんの土鍋。
これで二人分のシチューを作ろうと、電車の中を大事に胸に抱えて持って帰った矢先、
梱包を外してすぐに蓋を落として割ってしまい、必死に接着剤でくっつけたこと。
悲しいエピソードではありますが、今も変わらず接着剤がにじみ出たままになっているその土鍋の姿には、
二人分のシチューが入った様子や、うれしくてはやる気持ちなど、
感受性の風景があたたかに宿っていました。
ものの存在は本当に大きいと再確認するとともに、
外部から与えられるもの、一瞬で満たしてくれるものに満足せずに、
自分の好きを育てていく感覚、自分で自分の楽しさを作っていく感覚を大切にしてほしいという共通認識がありました。
それぞれの感受性を開くことへ意識を向けた2日間。
そこから見えてきたあたたかな実感とともに、F/styleから深いメッセージを受け取るような時間でした。
「つなぐ」という言葉については、「目的」や「ノウハウ」として語られることが多い昨今ですが、
F/styleの姿勢から、それはあくまで結果論であると痛感しました。
「つなぐ」とは、自分の感受性が響く部分にひたむきに向き合い、
そこから行動が生まれていく連続の先に見えてくる、プレゼントのようなものではないかと感じました。
参加してくださった皆さま、本当にありがとうございました!