山の辺の道 山町~虚空蔵町
三輪山の麓から、奈良盆地の東に連なる山々の裾を縫うように
奈良へと通じる幹線道路だった「山の辺の道」。
多くのいにしえの人も往来した日本最古の官道です。
今回は、久しぶりに山の辺の道をご紹介したいと思います。
昨秋、紅葉の季節に山の辺の道を含むルートを歩いてきました。
なお、鹿の舟からスタートできる山の辺の道のルートは
以前の「鹿の舟のいま」でご紹介しています。
こちらも合わせてご覧ください。
(前回のご案内記事はこちら、奈良市街~高円 編、
まずは、鹿の舟から徒歩8分のところにある、
JRまほろば線 京終(きょうばて)駅に向かいます。
京終駅からは1駅先の帯解(おびとけ)駅で下車し、
山の辺の道に向かいます。
帯解駅は明治31年に設置され、その開業当時からの駅舎は
令和4年に国の登録有形文化財に登録されたばかりです。
また、徒歩5分のところには、安産祈願のお寺として有名な帯解寺があります。
「腹帯地蔵」とも呼ばれるご本尊の地蔵菩薩は木造で、
そのお姿や大きさからは、安心感を与えて下さるたたずまいを感じられます。
下山町にある道しるべ。
左 山村御殿とあるのは、地元の人には言わずと知れた呼び方で、
法華寺、中宮寺とともに大和三門跡寺院の一つ、圓照寺を指します。
右へ折れて、五ヶ谷方面へ行きます。
国道を渡り、道なりに進むと田んぼの中に道しるべがあります。
サムライ街道となってる方面へ向かいます。
昔、お侍さん達が走り抜けていたのでしょうか。
車もない時代、この小道を人馬が行き来していた
かつての風景を想像すると時空を超えるようです。
サムライ街道を経て、山の辺の道に入ります。
山の辺の道に入ると、車の通りも少なくのどかな景色が続き、静かな時間があります。
まずは弘仁寺に立ち寄ります。
角が擦り減り、丸みを帯びた石段は今までの長い歴史を感じさせてくれます。
弘仁寺は弘法大師創建と伝わる寺で、虚空蔵菩薩を本尊とします。
13歳の子どもに知恵を授けていただく十三参りで有名です。
普段は参拝客が少なく、静かにお詣りできます。
本堂は堂々としていて、見飽きることがなく
ここでしばらく休息をとるのもおすすめです。
今回は紅葉の季節だったため、正暦寺へも足を伸ばします。
正暦寺は古来から「錦の里」と呼ばれ、
山深い場所に3000本を超える楓が色づく紅葉の名所です。
菩提仙川の渓流に沿う山道には往時をしのばせる石垣が続き、
大寺であったことがうかがい知れます。
正暦寺は日本清酒発祥の地といわれ、酒母(しゅぼ)である「菩提酛(ぼだいもと)」は
日本最古とされ、1月に仕込みがされたばかりです。
それに伴い、清酒祭も行われました。
正暦寺からは、五つ塚古墳群などの史跡を見ながら、山の辺の道に戻ります。
そこからは圓照寺の前を通り過ぎます。
圓照寺は非公開ですが、掃き清められた参道や静かな境内は
訪れる人の気持ちをも清らかに、穏やかにさせてくれます。
華道、山村御流の家元でもあります。
圓照寺の前からはJR・近鉄奈良駅行きのバスが運行しているので便利です。
また、開けた視界からは奈良盆地を見渡す事ができ、
歩いて出発地点の帯解駅まで戻るのも、また別の楽しみがあります。
今回のルートで約11kmの距離です。
公共交通機関等も利用しながら歩いてみてはいかがでしょうか。