山の辺の道 奈良市街~高円
初夏の心地良い陽気に包まれる奈良。
まだ、出かけるには不安な日々をお過ごしの方もおられることと思います。
そこで、少しでも外の雰囲気を楽しめるように、「道」をご紹介いたします。
ここ、奈良市街地は、一歩離れると自然豊かな場所が多数あり、
毎年、春から秋にかけて、ハイキングを楽しむ方の姿もよく見かけます。
田原や柳生の里まで続く「柳生街道(滝坂の道)」や、
自然がそのままに残る「春日山原始林遊歩道」、
そして、これからご紹介する「山の辺の道」などがあります。
「山の辺の道」は、弥生時代からすでにあったとされる、日本最古の官道です。
奈良市内から天理方面を抜けて、大神神社まで続くこの道は、
昔ながらの町並み、田畑の広がる風景、史跡や寺社が残り、
四季折々の風景と、歴史の重みが感じられます。
この場所で読まれた万葉集の歌も多く残り、道中には歌の石碑も見られます。
石碑を通じて、この道、この場所で過ごした人たちの想いが、
今でも大切にされていることが伝わります。
山の辺の道で、特に人気があるのが、天理市~桜井市の区間ですが、
今回は、[鹿の舟]から天理方面に向かう道をご案内いたします。
まずは、「新薬師寺」を目指して東に向かいます。
優しい表情をされたご本尊の薬師如来坐像に手を合わせ、
健康を願う方も、今年はより多くおられるのではないでしょうか。
新薬師寺の隣には鎮守である鏡神社があります。
鏡神社には、天照皇大神や藤原広嗣公、
そしてこの地域の氏神さまである地主神がお祀りされています。
そこから南に昔ながらの町並みを抜け、白毫寺のほうへと向かいます。
道中には、可愛らしいお地蔵さまの姿も見られ、ほっこりとします。
途中、右手に見える「宅春日神社(やけかすがじんじゃ)」。
こちらも歴史は古く、奈良時代に大阪の牧岡神社から春日大社に
神様を観進していた人たちが、高円山の麓であるこの場所で休憩したと伝えられています。
春日大社と同じように、20年に一度、造営を重ねているため、
本殿は新しく、大切に守り継がれていることが感じられます。
毎月、この神社では朝市が開催されるなど、地域の方にとっても、身近な場所です。
(「高円朝市」は、世情を踏まえて現在は中止されています)
懐かしい町並みと地域に根付く寺社の雰囲気に、
時代を遡ったかのような、どこか懐かしい感覚を覚えます。
この道は、「山の辺の道」としてだけではなく、「歴史の道」としても親しまれています。
ここから南に「山の辺の道」が続きますが、右に曲がり、
大安寺の位置する側に向かう道を、「歴史の道」と呼びます。
南に向かうと、景色は一変し、田畑の広がる風景が広がります。
この地域は今の時期に田植えを行うところが多く、
水の張った田んぼに映る空が、とても清々しく感じます。
季節が巡るごとに変化する田んぼの景色も、山の辺の道の魅力の一つですね。
高円から天理に続く道の続きは、また改めてご紹介いたします。
楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。