鹿の舟のいま

奈良のやくよけ観音

3月を迎え、春うららなひと時が続き、
散策を楽しまれる観光客の姿も少しずつ戻ってきました。

東大寺や春日大社、奈良町と多くの方が観光を楽しまれている中、
午の日、きたまちに朝から地元の方が集うお寺があります。

慈眼寺。

「じげんじ」と呼ぶこのお寺は、
聖武天皇が、夢に現れた聖観音を仏像にして祈ったところ、
疫病がおさまり、その仏像を守り仏として、不動愛染の二尊躰と聖観音菩薩を
安置したことが由来とされており、「やくよけ観音」と呼ばれるようになりました。

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そのため、午の日には、ご本尊の秘仏である聖観世音菩薩のお厨子が開かれ、
厄払いの法要が行われます。

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今年は、初午厄除け大法要は2月2日(土)、
そして今回の二の午大法要は3月10日(日)に行われました。

奈良のやくよけ発祥の寺でもあり、古くから「鍵元の寺」として、
慈眼寺の観音会式終わらないと、諸社寺の会式が始まらない、
といった云い伝えがあるほどです。


境内では、毎年、厄を祓い、幸せを願う多くの人々で賑わいます。

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南都諸大寺の一つでもあった慈眼寺ですが、
戦国時代には、大和国の戦国大名である松永久秀の乱逆により
荒廃したこともありましたが、その後、復興され、現在に至ります。

本堂で祈祷をされる方や、護摩木に願いを込める方、
それぞれに思いを持って足を運ばれています。

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また、境内の脇で温かなあめ湯の振る舞いが行われ、
厄を祓った後、しょうがと、あめの甘い香りに包まれ、
少し冷えた体をほんのり温めてくれます。

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そのまま境内の西裏手に回ると、立派な柿の木が目に飛び込んできます。

樹齢400年の柿の木。

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まだこの時期は枝のみと少し寂しい印象ですが、これから青々とした葉を付け、
秋には、たわわに実った柿の実が、参拝客の目を楽しませてくれます。

11月には、柿の収穫をお祝いし、同時に落ちた実の供養と
五穀豊穣を祈る「柿供養」が行われ、大切にされています。


聖武天皇は、[鹿の舟]のある井上町と関わりの深い井上皇后の父親でもあり、
天皇家の歴史を通して見る奈良も、面白いものです。

地域に根付いた寺院を巡るのも、観光名所とはまた異なる側面の奈良を知るきっかけとなり、
奈良巡りの楽しみの一つとなるのではないでしょうか。

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