古代の瓦
奈良町を散策していると、瓦が葺かれた家をよく見かけます。
現代の家ではあまり見かけなくなった、瓦。
築100年ほどの民家を利用した「観光案内所 繭」でも、
建物の大部分を当時のまま使用しており、
昔ながらの瓦葺きの屋根をご覧いただけます。
じっくり見ると、絵が描かれている瓦もあります。
瓦の歴史は非常に古く、
製造方法が確立されたのは、三千年以上前の中国で、
日本には588年に伝来したと言います。
飛鳥寺の造営に関わった技術者の一部であった、
百済の瓦博士を迎えたことがきっかけだったそうです。
以後、寺院や宮殿の屋根を中心に瓦が葺かれるようになります。
現在までに、その古代の瓦が様々な場所で出土し、博物館等で展示されています。
特に目を引くのは、蓮華や唐草のオリエンタルな文様の軒丸(のきまる)瓦、軒平(のきひら)瓦です。
平城宮跡にある朱雀門の屋根にも、
こちらの美しい軒丸瓦や軒平瓦を復元したものがあります。
当時、こういった文様のデザイン型は、軒丸瓦だけで70種類以上あったそうで、
いかに都の造営が活発に行われていたかが伺えます。
奈良にある大寺院で見つかっている瓦も、
それぞれデザインが異なり、個性的です。
時が経過し、江戸時代に桟(さん)瓦と呼ばれる、
古代の瓦で葺くより軽量になる瓦が発明されます。
これにより、一般家庭に瓦葺きが浸透し始め、
現在でもよく知られるものとなります。
遥か遠い時代に生まれ、長い歴史をもつ瓦。
古代の寺院・都の建物から、一般家庭まで、
私たちの生活を見つめ続けています。
奈良町を歩かれる際には、
屋根の上から見守る瓦たちに、想いを馳せてみるのも面白いかもしれません。