奈良と自然の香り
[鹿の舟]の田んぼでは、7月の終わりにはじめた土用干しを経て、
一回り強く根をはった稲たちが、風に吹かれて気持ち良さそうです。
暦の上ではもう、秋。
そろそろ肌で感じられる日が近づいています。
季節の変わり目に差しかかり、体調に変化を感じるようになります。
特に今年の夏は大変気温が高かったため、
少し疲れを感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そんなとき、自然の香りと親しむのはいかがでしょうか。
奈良には、春日大社へ向かうささやきの小径をはじめ、自然のある道がたくさんありますので、
何となく疲れを感じたら、
涼しい木々の中をゆっくり散歩してみると、気持ちも晴れやかになりそうです。
木々の中で深呼吸をすると、葉の緑の香りや、
樹木の温かみのある香りで気持ちがすっきりとした経験はありませんか。
人間の嗅覚は、脳の感情をつかさどる部位と直接繋がっており、
香りの情報はすぐに作用するそうです。
そのため、好きな香りを感じると、心身に良い影響を与えると言われています。
また、仏教ではよくお香を用いますが、
これには白檀(びゃくだん)などの香木がよく使われます。
奈良にはお寺がたくさんありますので、
香りを感じながら、自分と向き合うのも良いかもしれません。
奈良には古来、自然のものを活用して、平癒を目指す取り組みがありました。
正倉院の文書の中に「種々薬帳(しゅじゅやくちょう)」という、当時のお薬リストがあります。
薬草類のみならず、中には化石など、数種類が院内に納められており、
これらは、申請をすれば誰でも使用できたそうです。
リストには、コショウやシナモンといった、現代ではおなじみのものも載っています。
これらのほとんどが、遣唐使等によって海外からもたらされたものです。
現存するものには、千年以上経過した今でも使用できる品質を保っているものもあって、
正倉院の機能性に改めて驚かされます。
様々な文化と交流することで、
良い香りが良い効能をもたらすという考え方が育まれたようです。
そのため現代では、こういったものが広く活用されて、
より身近に恩恵を感じられるようになりました。
今年の6月に「観光案内所 繭」で開催された酵素シロップ教室でも、
シロップの材料として、個性豊かなハーブが香りにも彩りを添えました。
また、「喫茶室 囀」では、レモングラスのハーブティーをお楽しみいただけます。
奈良県の下市町で育てられたものを使用しており、
金色に輝く、目にも美しい色のお茶です。
レモングラスは、名前にレモンとありますが、
実はイネ科の植物で、お米の稲に似た、細く真っ直ぐの葉が特徴です。
レモン果実のような爽やかさに、どことなく大地の深みを感じる香りであり、
頑張った後に一息つきたいとき、食後などにサポートしてくれるそうです。
香りのある癒しのひとときを、ぜひ奈良でご体感くださいませ。
※ハーブは、お体の状態によっては強く作用をもたらす可能性がありますので、
医師や専門家に相談しながら、上手にお付き合いください。