浴衣の古典柄
自然や生活の中に存在するものを取り入れた伝統的な和柄にはそれぞれ意味があり、
日本人は季節の行事や七五三、成人式といった人生の節目の儀式に、
伝統柄の衣装を身に着け、無病息災や家族の健やかな成長、幸福を願ってきました。
夏を彩る風物詩のひとつである、浴衣の生地にも、さまざまな日本古来の柄を
見つけることができます。
浴衣はもともと平安時代の沐浴着が起源で、その名前である湯帷子(ゆかたびら)
が浴衣の語源となったと言われています。
その後、江戸時代には庶民の間にも湯上り着として定着し、盆踊りをはじめとする
夏のお祭りに着ていくことも流行しました。
明治時代には夏の普段着として定着したそうです。
この頃から招福や厄除けといった願いがこめられた美しい柄が、気軽に日常に
取り入れられていったと考えられます。
麻の葉文様は、麻が丈夫で成長が早く、まっすぐ育つので、縁起が良い植物とされ、
産着やお宮参りにも使用されています。
連続させて麻の葉繋ぎとして取り入れられることが多く、古くは平安時代の
仏像の衣にも用いられるなど、歴史のある図柄です。
菊の文様は日本の国章でもあり、高潔な印象があります。
同時に邪気を払い、長寿を意味すると昔からいわれる由緒ある柄です。
蝶の文様は、「ちょう」という発音からも「長命」「不老不死」とつながり、
縁起が良いとされた文様です。
卵から幼虫、さなぎへと姿を変えて、最後は蝶となり飛び立つ姿から、
不死不滅の象徴だとされていたため、武士である平家の旗印にも用いられました。
蜻蛉(とんぼ)は、後へ引かず、一直線に前進することから
「勝ち虫」と呼ばれています。戦国時代にはその性質から、武士に好まれ、
蜻蛉柄は武具や着物に使用されたそうです。
目標を持って前に進むようにという願いが込められています。
扇子は、平安時代に日本独自のものとして考案され、現在のような形に定着しました。
その末広がりの形から別名「末広」ともいわれています。
扇子柄は商売繁盛や子孫繁栄などの願いを込めて、幅広く取り入れられています。
浴衣の柄のように、日常で何気なく目にしているものも、背後にある伝統文化に
触れることで、より一層、楽しみ、親しむことができるのではないでしょうか。
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