アジサイ寺
明日から6月、奈良町では紫陽花の花を見かけるようになりました。
[鹿の舟]でも、鮮やかな紫陽花が庭を彩り、
訪れる人の目を楽しませてくれています。
紫陽花は、奈良時代には歌にも詠まれるなど、日本原産の花木です。
紫陽花らしさの一つでもある花の色が移り変わる様は、
この世のものは常に変化をしており留まることがない、
という諸行無常の心と通じているため、多くの寺院で見かけます。
奈良でも、紫陽花の名所は何ヶ所かありますが、
寺院では、「矢田寺」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
矢田寺では、明日から7月10日までアジサイ園が開園し、
毎年多くの方が紫陽花を愛でに足を運ばれます。
矢田寺の紫陽花が植えられたのは昭和40年頃と最近ですが、
境内を彩る紫陽花はおよそ10,000株あり、
咲き誇る様はとても華やかで見ごたえがあります。
すでに開花しているツルアジサイから9月頃に咲き始める中国の紫陽花まで
品種も約60種あり、長く花を楽むことができます。
矢田寺は正式には「金剛山寺」といい、この一帯が矢田の里と
呼ばれていたため、「矢田寺」と呼ばれるようになったようです。
日本最古の延命地蔵菩薩を安置しており、
地蔵信仰の中心地として知られています。
多くのお地蔵さまは、右手に杖、左手に如意宝珠を持っており、
その宝珠の形は、紫陽花の丸い花からきています。
しかし、矢田寺のお地蔵さまの多くは、
右手の親指と人差し指を結んだ独特の振る舞いをしているため
「矢田型地蔵」と呼ばれています。
他にも、境内には味噌の味を美味しくしてくれるという「みそなめ地蔵」をはじめ、
個性的な意味合いのあるお地蔵さまも多く、お地蔵さまを見比べるのも楽しみ方の一つです。
お地蔵さまは、今では子供を見守る仏様として知られていますが、
元はインドの「大地の神様」が起源で、仏教が生まれるずっと昔から信仰されていました。
「地上に存在する生命あるものの全てをやしなってくださる者」
という意味があるそうです。
矢田寺は丘陵地にあるため、眺望が良く、奈良盆地を見下ろすことができます。
市街地から少し足を延ばして、紫陽花に包まれてみてはいかがでしょうか。
(写真は一昨年の矢田寺の風景です、今年はまだ蕾の品種もございます)