鹿の舟のいま

砂ずりの藤

やさしい色と垂れ下がる姿が美しい藤の花。

砂ずりの藤.jpg


今年は、藤の開花も例年より早まっており、
興福寺や春日大社の藤も開花し始めています。


藤原家を代表する花でもある藤。

藤原家の氏神である春日大社では、古くから藤が自生しており、
境内でも至るところで藤の花を見ることができます。

春日大社の神紋に描かれている「下り藤」からも、
藤が大切に扱われてきたことが伺えます。

その中でも、ひと際目を引くのが、
慶賀門(けいがもん)のそばに植わっている「砂ずりの藤」です。

慶賀門 藤.jpg


棚作りの立派なこの藤は、毎年、花の穂が地面の砂に
すれそうになるほど伸びることから、このように呼ばれています。

今はまだ咲き始めのため、花房は短めですが、
これから成長し、穂が伸びていく様を眺めるのも楽しみです。

藤棚.JPG


摂関の近衛家から献木されたとされるこの藤の樹齢は800年以上とされ、
鎌倉時代に描かれた絵巻「春日権現験記」から、
当時も、この場所に藤が植わっていたことが記されています。

昔から、この地で毎年花を咲かせてきた藤が、
今でもきれいな花を咲かせ、多くの参拝者の目を
楽しませてくれていることを思うと、感慨深いものを感じます。

砂ずりの藤から慶賀門を越え、剣先道のほうに進むと、
白い花を咲かせる藤の老木を見ることができます。

因みに、この「剣先道」は、境内の祓戸神社から二股に分かれた道の北側、
敷石が剣の形に敷かれている道を指し、
先端の石は踏んではいけないと伝えられています。

剣先道.JPG


3月の春日祭の際、藤原姓の勅使がこの道を通り、
藤鳥居をくぐって本殿へと向かわれます。

藤原姓以外の勅使は南側の道を通り、南門をくぐって本殿へと向かうため、
剣先道は、藤原家にとって特別な道でもあります。


また、春日大社の参道にある春日大社神苑「萬葉植物園」には
「藤の園」が設けられ、20品種、およそ200本の藤が植わっています。

こちらの藤の花も開花を始めており、紫やピンク、白と、
色鮮やかな藤の花が連なる様は、とても雅です。

こちらの藤は藤棚だけでなく、立ち木作りで植わっているものもあり、
目線の高さで咲き誇る藤の花を楽しむことができます。

この植物園では、他にも万葉集に詠まれた植物が植えられ、
四季の彩りをお楽しみいただけます。


これから満開を迎える藤の花、
奈良を散策される際には、藤の花を通して垣間見る
奈良の歴史や文化の奥ゆかしさも併せてお楽しください。

藤アップ.jpg

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