春日山原始林
奈良の春日山原始林は市街地に隣接していながら、自然の姿を残す大変珍しい原始林です。
身近なのでつい忘れてしまいそうになりますが、
屋久島スギ原始林や北海道の野幌原始林と並んで、国の特別天然記念物に指定されており、
ユネスコの世界文化遺産「古都奈良の文化財」にも登録されています。
春日山の原始の姿が残ったのは「千年斧を加えず」と言われるとおり、
春日大社の聖域として9世紀に狩猟や伐採が禁止され、長く守られてきたからです。
春日大社の神域という意識は今なお引き継がれており、奈良の人々は春日山原始林を
「春日さんの森」と親しみを持って接しています。
こうした古から受け継がれた敬意や親しみが、
森林を守ってきた大きな理由のひとつと言えるかもしれません。
本当に市街地にぴったりと寄り添っているため、春日大社から東に少し歩くと、
春日山原始林遊歩道の入口(北)があり、原始林にすぐ入ることができます。
スギやイチイガシの巨木、自生は稀なナギなど、
800種以上のさまざまな植物や鳥類が生息しているため、
樹木の観察やバードウォッチングを楽しんでいる方々にも出会います。
深い静寂の中に鳥が木々から飛び立つ音や川のせせらぎがひびきます。
木漏れ日がスポットライトのように巨木にそそがれている様子は、
その木が過ごした悠久の時間を浮かびあがらせているようで、神々しい雰囲気があります。
様々な感触の木肌やうねうねと地面をつかむ根っこ。
この季節、光をうけて透き通るような瑞々しい青葉。
森は私たちの五感につぎつぎと語りかけてくるようです。
原始林の散策ルートには隣接する若草山の山頂(三重目)へつながるものもあります。
原始林を出て、若草山に到着すると、大きく景色がかわります。突然視界が開け、
柔らかい稜線を芝生に覆われた若草山からは春日山原始林や市街地が一望できます。
この地が寺社と、神々が宿る山と市街地が調和しながら歴史を紡いできたこと、
またその固有性を感じる景観でもあります。
若草山には一重目、二重目、頂上(三重目)があります。
それぞれの稜線上で人や鹿がくつろいでおり、
こちらもほっと一息、ゆったりとした気持ちになります。
これからの季節、原始の森と触れ合うには絶好の遊歩道です。
帰りには身も心も軽くなっているかもしれません。
[鹿の舟]繭では時間や気分に合わせて最適な散策ルートもご提案しております。
ぜひお問合せください。