砂かけ祭り
2月から田植えの時期にかけて行われる「御田植祭」。
奈良でも様々な神社で御田植祭が催されます。
2月3日(土)に手向山八幡宮で催された御田植祭は
記憶に新しいのではないでしょうか。
五穀豊穣や厄除けの願いを込めて行われる御田植祭りは、
この時期には、農作の演技を行うところが多く、
田植えの時期では、神苗でお田植えを行うところもあり、
神社によって時期や内容も異なります。
そんな中、今週末の2月11日(日)には、
河合町の廣瀬大社(廣瀬神社)でも御田植祭が行われます。
別名を「砂かけ祭り」と言い、奈良の奇祭として知られています。
廣瀬大社は、佐保川、初瀬川、飛鳥川、曽我川など、
奈良盆地を流れる全ての河川が合流する地に建てられています。
崇神天皇の時代、この地域の里長にご神託があり、
一夜にして一帯の沼地が陸地へと変化し、多くの橘が生えたそうです。
そのことを知った天皇がこの場所に社殿を建てられ、
水の神様である大忌神(おおいみのかみ)をお祀りするようになったと言われています。
このように昔から水との関わりの深いこの神社で、
治世4年、天武天皇の頃に行われた大忌祭の行事の一つが
砂かけ祭りの起源とされています。
午前の神事「殿上の儀」では、苗代作り、苗代巡り、苗取り、田植えの所作を行い、
午後の「庭上の儀」では、拝殿前に注連縄を張ることで田園を表現し、
田人と牛に扮した氏子が田植えの所作を行い、鋤を用いて砂を撒きます。
他の地域の御田植祭では、雨に見立てて水を撒くところもありますが、
こちらでは、水神をお祀りする神社の砂、つまり神様の砂を
雨に見立てて撒かれ、豊作をお祈りします。
牛役の氏子も、掛け合いの際には牛面を取って参戦します。
レインコートやゴーグルを着用する参拝者も多く、
掛け合いも回を重ねるごとに激しくなります。
砂の掛け合いが盛んなほど雨がよく降り、豊作になると言われており、
毎年、境内いっぱいに砂が舞い散ります。
掛け合いが全て終わると、早乙女が松苗を稲の苗に見立て、
注連縄の囲いの中で田植えの所作を行い、「庭上の儀」は終了となります。
今では、子供から大人まで楽しめる奇祭として親しまれていますが、
昔から水不足に悩む奈良盆地の人々にとって、
とても大きな意味を持つお祭りだったのではないでしょうか。
今週末のこの砂かけ祭りのほかにも、今後各地で行われる「御田植祭」。
日本人にとって稲作がどれほど大切にされてきたのかを感じ取れますので、
一度、体験・拝見してみてはいかがでしょうか。