柿の葉寿司
奈良の郷土料理「柿の葉寿司」。
観光客の方から柿の葉寿司のお店を尋ねられる機会も多く、
奈良を代表する食べ物の一つとして知られています。
吉野川(紀ノ川)の上流が、柿の葉寿司の産地と言われています。
江戸時代中頃、紀州の漁師が、釣った鯖が傷まないよう塩でしめ、
舟運で河川を上るか、行商が背負い籠で峠を越えて山村に売りにいっていました。
その際、塩がまわり、そのままでは食べられなかったため、
塩気を和らげるために魚の身を薄く切り、ご飯と一緒に食べ始めたと言われています。
当時の五条や吉野、大峰の地域では、
夏祭りや地域の集まりに欠かせないご馳走として親しまれていたようです。
当初は白ご飯で作られていましたが、醸造酢の普及もあり、
次第に今のように酢飯を用いたお寿司が作られ始めました。
また、柿の産地でもあるこの地域では、殺菌作用のある柿の葉で包むことで
保存がきくようになり、葉の香りがお寿司に移ることで、風味も豊かになります。
柿の葉寿司では渋柿の柔らかい葉が使われます。
夏が旬の柿の葉寿司ですが、今では一年を通して食べることができ、
5月の青葉、秋の紅葉、塩漬けした葉を使うお店もあります。
今の時期、紅葉で包まれた柿の葉寿司は見た目にも鮮やかです。
また、昔から鯖を用いた柿の葉寿司が親しまれてきましたが、
鮭や他の魚を用いた柿の葉寿司もみかけるようになりました。
お店によって少しずつ味わいが異なる柿の葉寿司。
今では、奈良町界隈に出店されているお店もありますので、
食べ比べなどをされ、お気に入りのお店を見つけて、
食欲の秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。
また、本日10月26日は「柿の日」です。
「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」
正岡子規がこの句を詠んだ日が、明治28年10月26日と言われています。
10月も終わりにさしかかり、秋深まる奈良町でも、
奈良で育ったみずみずしい柿が青果店に並び、
柿を用いたデザートも見かけるようになりました。
「食堂 竈」でも、農家さんのこだわりの富有柿を取り揃えております。
秋の味覚を味わってみてはいかがでしょうか。