風鈴まつり
涼やかな風鈴の音。
耳を澄ますと、暑さをふっと忘れるような、心地よさに包まれます。
奈良町から、電車と徒歩で1時間ほど、
橿原市小房町にある「おふさ観音」には、
目にも耳にも涼やかな風鈴がおよそ2,500個、境内に集まります。
古代中国でお寺の軒下に吊り下げた小さい鐘のようなものを
「風鐸」と言い、これが風鈴の起源とされています。
平安貴族たちが、日本に伝わってきた風鐸を
各々の家に吊るしたことが、風鈴の始まりとされています。
また、仏教の思想では、風鈴の音色は厄を祓うと言われています。
「風鈴まつり」は、このような歴史から、
お寺で涼を感じる行事にふさわしいと考えられ、始まりました。
こちらの寺院は「おふさ観音」の愛称で親しまれていますが、
正式名称は高野山真言宗の「観音寺」といいます。
慶安3年、この土地で暮らしていた娘の「おふさ」さんが、
当時、この地にあった鯉ヶ淵という大きな池のそばを歩いていたときに、
白い亀の背中に乗った観音様が目の前に現れました。
それを見たおふささんは、池のそばに小さなお堂を建て、
そこに観音様をお祀りしたのが、観音寺の始まりとされています。
お願い事を叶えてくださる観音様は、近くの村人たちに厚く信仰され、
いつしか「おふさ観音」と呼ばれるになりました。
明治に入ると、観音様のために本堂を建立する話が持ち上がり、
多くの方の寄付によって本堂が建てられました。
おふさ観音は、多くの人の想いが集う庶民信仰のお寺として、
地域の人々によって守り続けてられています。
この寺院のある地域では、夏に厄払いのお参りをしていたようです。
昔は夏になると食あたりや、暑さで病気になる人が多く、
身体の健康を授けるおふさ観音で、
夏を乗り切れるようにと厄払いをされる方もおられたようです。
そこで、多くの方に夏を心地良く過ごしてもらうため、
夏の風物詩である風鈴を吊り下げたそうです。
ガラス、陶器、鋳物。
それぞれの素材によって異なる響きが生まれます。
いくつもの風鈴が優しく奏でる心地よい音色、
時折吹く強い夏風に大きく揺れる風鈴の、存在感のある音色、
涼やかな音色が一斉に響き渡ります。
鹿の舟のすぐ近く、紀寺町でも、家々の軒先に吊るした風鈴の音が
心地よく響く、小さな通りがあります。
長さ100mほどの細い通りに並ぶ様々な風鈴は涼し気な音色を奏で、
その音に誘われて通りに足を向ける人の姿も見られます。
どこか懐かしさを感じる風鈴の音色は柔らかで、
涼と風を感じるひと時を楽しむことができます。
夏の涼に耳を澄ませ、風情あふれる奈良の夏をお楽しみください。