おたいまつ
「おたいまつ」の愛称で知られる新薬師寺の修二会。
奈良市内各地で桜が咲き誇る8日(土)に行われました。
もともと7日間かけて行われていた修二会ですが、次第に日数が短くなり、
今ではお薬師さまの縁日である4月8日に行われます。
奈良では、3月から4月にかけて奈良の古寺で修二会が営まれます。
昔は各お寺で修二会が行われていましたが、
今では、行事を続けているお寺は少なくなりました。
東大寺の修二会は「お水取り」、薬師寺の修二会は「花会式」、
と親しまれているように、
新薬師寺の修二会は「おたいまつ」と呼ばれ、
天平時代から続く伝統ある行事です。
雨の降りしきる夕方、ご本尊の薬師如来坐像の御前で、
「薬師悔過法要」と「三十二相」が行われました。
「悔過」は、罪や過ちを悔いることを意味します。
「薬師悔過」とは、病の苦しみを救う薬師如来坐像の功徳を称え、
過ちを懺悔して、厄除けや健康を祈る法要をいいます。
人の心の中に、「貪(欲張り)」「瞋(いかり)」「痴(愚かさ)」の
三毒によって生じる罪業がけがれとして溜まっていくことで、
悪いことが起こるとされていました。
そこで、身を清め、薬師如来坐像の前で罪を懺悔することで、
心のけがれを取り除き、悪いものを祓い、福を招くために行われています。
雨が落ち着いた日没、本堂の扉が開帳され、
東大寺から寄進された10本の大松明と1本の籠松明を道灯りにして、
僧侶が1人ずつ本堂の周囲を歩き、入堂します。
東大寺二月堂修二会のお松明に次ぐ、盛大な「おたいまつ」です。
お松明を勢いよく回転させると火の粉が舞い散り、周りを朱く染める様は、
夜の暗がりの中でより一層、荘厳な雰囲気を生み出します。
「おたいまつ」が終わると後夜法要が行われ、僧侶の声が堂内に響き渡ります。
扉の奥には、桃の花と南天の実が飾られている様子もみられます。
全ての法要が終わると、境内は落ち着き、夜の静けさに包まれました。
また、新薬師寺を始め、奈良町でも桜を楽しむことが出来ます。
[鹿の舟]から北へ5分ほど歩くと「元興寺塔跡」があります。
昔、奈良町の一帯が元興寺の敷地であったと言われるほど、
大きな力を持っていた元興寺。
その元興寺の歴史を伝える塔跡は、基壇と礎石の大きさから、
当時は興福寺の五重塔をしのぐ高さの五重大塔が建っていたことを
今に伝えています。
その塔跡を見守るように、満開の桜が咲き誇ります。
にぎわう奈良町の通りから少し奥に入るため、
ゆったりと桜を楽しめます。
これから散り始める花びらが風に舞い、
地面を桜色に染める様もとても美しいものです。
季節の風景をお楽しみください。