飛火野
早朝の奈良公園は、散策やウォーキング、ジョギングをする人たちでにぎわいます。
空気がとても澄んでいて気持ちよく、静けさの中で行き交う人たちの挨拶や
鹿の鳴き声、鳥のさえずりが聞こえてきます。
冷え込む冬の朝、霜が降りてうっすら白く色づいた芝生の景色は
いつもの装いとは異なり、どこか幻想的にさえ感じます。
中でも、奈良公園の南東に位置する「飛火野」から見る朝日は格別です。
飛火野から初日の出を拝まれた方もおられると思います。
春日山と高円山の間から徐々に顔を出す朝日と、
その光に照らされる鹿の群れの光景は何度見ても美しく、
光が芝をあたため朝露がたちこめる空間で太陽が鮮やかに現れる姿に心が洗われます。
飛火野は、親しみ深い奈良公園のなかでも、
一面を見渡すことができる広大な芝生をもつ場所を指します。
飛火野は、昔は「春日野」と呼ばれており、御蓋山を仰ぐ祭祀の行われた場所でした。
春日の大明神が、夜、鹿を召されて春日大社神苑(しんえん)に到着された際、
足元が暗かったので、お供であった八代尊(やしろのみこと)が口から火を出し、道明かりをつくったところ、
火がそのまま消えずに飛んで回ったことから「飛火野」という地名がついたと言われています。
また、飛鳥時代より貴族たちが飛火野で打球・若菜摘み・花見をしていたことが知られ、
平安時代には王朝の憧れの名所となっていました。
明治25年より毎年夏に行われている鹿寄せも、ここ飛火野で行われます。
フレンチホルンの音色に誘われ多くの鹿が集まってくる姿を見に、多くの観光客の方が訪れます。
集まった鹿たちがごほうびの「どんぐり」を美味しそうに食べている姿はとても愛らしいです。
今では、冬の「奈良大和路キャンペーン」の期間中も実施されており、
冬の風物詩としても知られています。
ところ変わって奈良町では本日早朝7時より、南市恵比寿神社で本えびすが開催されています。
普段は落ち着いた雰囲気のある神社ですが、境内では吉兆笹の販売が行われ、
参道にも縁起物を販売するお店が軒を連ね、朝から多くの方が訪れます。
また、率川神社の境内にある阿波神社でも率川阿波神社初戎が催されています。
奈良市内で最も古い恵比寿さまをお祀りしているお社があり、
こちらでも吉兆笹の販売をしています。
本日は二十四節気の小寒にあたるため、これから徐々に寒さが厳しくなりますが
商売繁盛や福徳招来を願う方の熱い思いで冬の寒さを吹き飛ばしていけたらと思います。
皆さまもぜひ、少し早起きをして奈良を散策されてはいかがでしょうか。