一刀彫り
「観光案内所 繭」に入り少し目線を上げると、
奈良の伝統工芸品である「一刀彫り」が目に入ります。
「一刀彫り」とは、大和の風土の中で育まれてきた伝統技法です。
「一刀彫人形」は、またの名を「奈良人形」とも言われています。
桧、桂、楠などを素材としてノミで豪快に彫り上げ、
仕上げとして、緻密で華麗な極採色を施していることが
大きな特徴として挙げられます。
すべてを曲面にしてしまうのではなく、あえて鑿跡を残し、
木の温もりをも感じさせ、鋭く美しい動きを表現している木面、
そしてそれを鮮やかに彩る金箔や岩絵具による華麗な色彩は、
薪能の装束から影響を受けたもので、雅な宮廷文化を思い起こさせてくれます。
一刀彫の起源は、平安時代の終わりごろ春日若宮祭において、
田楽の笛吹笠、盃台を飾る風流人形として飾られたものだといわれています。
当初は、神事に使われるものであったため、
できるだけ人の手が触れないようにと、シンプルなつくりのものでしたが、
一刀彫りの大きな特長である極彩色は当時から施されていました。
江戸時代に入ると、それまで祭礼にのみ使われていた一刀彫りが、
能楽、舞楽、鹿、十二支、ひな人形や節句人形にも使われるようになり、
一般の人々の生活を彩る美術品として親しまれるようになりました。
伝統ある一刀彫は、その時代その時代に合わせて形を変えながら、
現在も生活によりそう伝統工芸品のひとつとして、
たくさんの人に愛されているのです。
来年の干支である「酉」の一刀彫りを繭で展示しています。
土井志清氏、荒木義人氏、大林杜壽園氏、浦弘園氏の作品です。
同じ酉でも作り手によって形や色付けが違っており、
様々な酉をご覧いただけます。
また、繭2階では今週末の18日(日)まで
「岩田圭介 岩田美智子 二人展」を開催しています。
岩田圭介さんが生み出す陶の作品と、
岩田美智子さんの作り出す紙や木を用いた立体作品が
空間をやさしく包み込みます。
鹿の舟にお立ち寄りの際は、是非ご覧ください。